業務改善

看護師の申し送り・情報共有を改善するには?残業を生む「伝達の無駄」をなくす実践アプローチ

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「申し送りが終わらない」「口頭で伝えたはずなのに情報が届いていなかった」――こうした問題は、看護現場でほぼ毎日起きています。申し送りや情報共有の非効率は、単なる「時間のロス」ではなく、残業の直接的な原因であり、医療ミスのリスクにもつながる構造的な課題です。

この記事では、申し送り・情報共有の改善に向けた実践的なアプローチを、データと事例をもとに解説します。

この記事がおすすめな方 
  • 申し送りが長くて残業につながっていると感じている現場の看護師の方
  • 情報伝達のミスやズレが繰り返されていて困っている
  • 申し送りやカンファレンスのやり方を見直したい師長・看護管理職の方
  • ICTや電子カルテを活用した情報共有の改善事例を知りたい方

申し送りはなぜ「残業の温床」になるのか

時間データが示す現実

厚生労働科学研究(坂本すが代表、47病院50病棟・看護師955名対象のタイムスタディ)では、1日の看護業務量の上位6項目の中に「看護師間の申し送り」が入っており、残業として行われる業務の最上位は「日々の看護実施記録」でした。申し送りと記録業務が、時間外労働の主な原因となっている実態が数字で裏付けられています[1]。

昭和大学藤が丘病院の研究(昭和学士会誌,2021)では、申し送り方法が統一されていないことと業務の見直しが長期間行われていないことが、夜勤明け超過勤務の常態化(年間416時間)の主因であることが明らかになりました。改善後は年間90時間まで削減(約78%減)されており、申し送りの見直しがいかに大きなインパクトを持つかを示しています[2]。

また、同研究が指摘するように、「全患者の情報をそのまま口頭で次に送る」スタイルが時間超過の構造的な原因です。受け手が申し送りを唯一の情報源にしてしまうことで、送り手も「漏れなく伝えなければ」という圧力から必要以上に詳細を話し続けることになります。

情報伝達ミスと医療安全のリスク

申し送りの問題は時間だけではありません。口頭伝達は記憶や解釈に依存するため、情報の抜け漏れや誤解が起きやすく、医療安全上のリスクにもなります。情報が「送り手の判断」に依存する属人的な構造は、スタッフの経験年数によって伝達品質にばらつきが生じる原因にもなります。

改善の前にやるべきこと – 現状の「見える化」

改善策を検討する前に、自部署の申し送り・情報共有の実態を正確に把握することが先決です。

まず取り組みやすいのは時間の計測です。1週間、申し送りにかかった時間を記録するだけで、「平均何分かかっているか」「何曜日・何の勤務帯が長いか」が見えてきます。次に内容の分析として、「状態変化がない患者も全員口頭で送っているか」「カルテを読めばわかる情報を重複して伝えていないか」を確認します。

スタッフへの簡単なアンケートも有効です。「申し送りのどの部分が無駄だと感じるか」「情報が届いていなかったと感じた経験はあるか」などを聞くことで、当事者からの改善ヒントが得られます。GoogleフォームなどのフリーツールをICT活用の第一歩として使うのも手軽です。

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具体的な改善アプローチ

1. 口頭申し送りの「範囲を絞る」

最も即効性が高いのが、口頭で送る情報の範囲を限定することです。昭和大学藤が丘病院の改善事例では、「全患者の口頭申し送りを廃止し、夜勤帯で起きた状態変化・指示変更・要望があった患者のみを口頭で送る」方式に切り替えました。その他の情報はワークシートに記載し、読めばわかる形にしたことで、申し送り時間と夜勤明け残業が大幅に削減されました。

ポイントは「電子カルテ(または記録)を読めばわかる情報は原則送らない」という前提をチーム全体で共有することです。受け手が「申し送りだけを頼りにしない」意識を持てるよう、記録そのものの質と読みやすさを同時に改善することも重要です。

2. 申し送りフォーマットの標準化

申し送りの内容が個人によってバラバラな場合、フォーマット(リーダーシートやワークシート)の統一が効果的です。ある病棟の事例では、リーダーシートの項目を見直し、「患者の状態変化・新しい指示・家族への対応事項」に絞って記載する形に標準化。その結果、ベッドサイドではなくリーダーシートだけで状況把握ができるようになり、チームカンファレンスでの情報共有もスムーズになりました(朝倉医師会病院,2018年研究報告)[3]。

SBARなどの構造化コミュニケーションフレームワークも、報告や申し送りの質を均一にするための有効な手法です。

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3. 電子カルテ・ICTによるリアルタイム情報共有

厚生労働科学研究のタイムスタディでも、「ICT移譲が望まれる業務」の第1位は「看護師間の申し送り」、第2位は「看護師間の報告・連絡・相談」でした。現場のニーズとして、申し送りこそデジタル化が急務な業務であることがわかります。

県立広島病院の改善事例では、電子カルテへの記録を「リアルタイム入力」に切り替え、テンプレートで入力項目を標準化しました。その結果、時間外に行われていた記録業務が大幅に削減され、「記録のために残る」状況が解消されました(日本看護協会,2020年報告)[4]。

スマートフォンや院内チャットツールの活用で、担当外の患者の状態変化もタイムリーにチーム全体へ共有できる環境を整えることで、申し送り時のコミュニケーション量そのものを減らすことが可能になります。

メディカルギークのscreeは、入院時問診をタブレットでスムーズに進められる入退院支援サポートサービスです。予定入院の場合、患者・家族の事前入力も可能。入力された内容はタブレット・パソコンを通して院内どこからでも確認できます。もちろん看護師に限らず多職種で利用OK。看護師経験のある専門スタッフがサポートします。 

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4. チームカンファレンスの活用

申し送りを「一方向の情報伝達」から「双方向のチームカンファレンス」に切り替えることで、情報の共有精度と効率を同時に高めることができます。個人が受持ち患者の情報しか把握していない状況から、チーム全体で同じ情報を持ち協力できる体制になることで、申し送り時間の短縮に加え、インシデント防止や看護の質向上にもつながります。

改善を組織に根付かせるために

スタッフの巻き込みが成否を分ける

業務改善で最もよく失敗するパターンが、「管理職やリーダーが決めた方法を現場に押し付ける」ことです。申し送りの改善は、実際に送る・受けるスタッフ全員の協力なしには機能しません。改善の検討段階からスタッフの意見を取り入れ、「なぜ変えるのか」を丁寧に説明することが継続的な定着の鍵です。

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小さく始めて効果を測る

一度に全病棟・全勤務帯に展開するのではなく、特定の病棟・特定の勤務帯で試験導入し、「申し送り時間が何分短縮されたか」「スタッフの満足度がどう変わったか」を数値で確認してから展開する段階的なアプローチが現実的です。「残業時間を月10時間削減」「申し送り時間を平均5分以内にする」など、測定可能な目標を改善前に設定しておくと、効果の可視化がしやすくなります。

まとめ

申し送り・情報共有の改善は、看護師の残業削減と医療安全の向上を同時に実現できる、費用対効果の高い業務改善テーマです。口頭申し送りの範囲を絞る、フォーマットを統一する、電子カルテのリアルタイム活用を進める――どれも大規模な設備投資なしに着手できます。

大切なのは、「なんとなく続けてきた申し送りの形」を一度立ち止まって見直すことです。データと事例に基づいた改善は、現場の納得感を生み、持続的な変化につながります。

メディカルギークは、業務改善ソリューションをご提供しています。 
特に、看護師の声から生まれた「scree(スクリー)」は、入院時の情報収集から記録までを今よりも簡単にできるサービスです。 

screeはただのITツールではありません。 

  • 病院の現場フローに即した、直感的なデザイン
  • 病院ごとの帳票に合わせ、専門家が効率化させた個別カスタマイズ仕様 
  • 小児や周産期など、専門領域にも対応可能
  • 看護師だけでなく他職種の記録業務も解決できる 

看護師の経験を持つ担当者が貴院の課題を丁寧にヒアリングし、screeの導入がどのように貢献できるか、具体的な活用方法をご提案させていただきます。

参考資料

  1. 厚生労働科学研究「効率的な看護業務の推進に向けた実態調査研究」坂本すが代表 https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/27020
  2. 古川浩次ほか(2021)「看護師の夜勤明け超過勤務に対する業務改善の効果」昭和学士会誌 第81巻第3号 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/81/3/81_283/_pdf/
  3. 瀬戸口舞ほか(2018)「申し送り時間の短縮に向けた業務改善への取り組み」朝倉医師会病院 https://www.asakura-med.or.jp/hospital/pdf/kenkyu2018-04.pdf
  4. 公益社団法人日本看護協会「看護業務効率化先進事例収集・周知事業報告書(2020年)」https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/report/2020/work_efficiency.pdf
  5. 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」https://irouren.or.jp/research/
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