看護師の業務改善を成功させる②|現場調査の進め方と改善実施までの流れを徹底解説
「目標は決まった。でも、どうやって現場の実態を把握すればいい?」「アンケートを取ってみたけど、結果をどう活かせばいいかわからない」——業務改善を進める看護師から、こうした声をよく聞きます。
前半記事「看護師の業務改善を成功させる①|目標設定方法と現場での実践ポイント」では、SMART目標を使って改善の方向性を言語化するところまでを解説しました。
本記事ではその続きとして、現場調査の具体的な進め方から、調査結果をもとに改善策を実施・評価するまでの流れを、看護現場に即した実践例をもとに解説します。「現場調査ってどうやるの?」という疑問をお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。
- 目標設定は終わったが、次のステップに迷っている業務改善委員
- 現場スタッフから「忙しい」という声は上がるが、何が問題か整理できていない看護師長・看護部長
- 業務改善を形だけで終わらせず、実際に職場環境を変えたいと考えている看護師
- タスクシフトや業務効率化ツールの導入を検討しているが、根拠となるデータが不足していると感じている管理職
なぜ「現場調査」が業務改善の要になるのか
業務改善が途中で止まってしまう理由の一つに、「思い込みによる改善策の立案」があります。「あの業務が大変そうだから改善しよう」という感覚的な判断で進めると、実際には現場への影響が小さかった、あるいはまったく別の業務に問題の根本があったというケースが起こりがちです。

厚生労働省は2023年度から「タスク・シフト/シェア」の推進を強化しており、看護師の業務負担軽減と多職種連携による効率化が政策的な課題として明確に位置づけられています(厚生労働省, 2023)。しかし、どの業務をシフトするかを決めるためには、現状の業務実態を正確に把握することが不可欠です。
現場調査は「感覚」を「データ」に変えるプロセスです。客観的な根拠があることで、改善策の説得力が増し、管理職や他職種からの協力も得やすくなります。
現場調査の前に:調査目的を明確にする
調査を始める前に、「何を明らかにしたいか」を整理しておくことが重要です。目的が曖昧なまま調査を始めると、データを集めても「で、結局何が問題なの?」という状態になりがちです。
前半記事で設定したSMART目標を起点に、以下の問いに答えてみましょう。
- 何の業務を調査するのか?(例:申し送り業務、看護記録、物品管理など)
- 何を明らかにしたいのか?(例:所要時間、手順の重複、スタッフの負担感など)
- 調査結果をどう使うのか?(例:タスクシフトの根拠、ツール導入の提案資料など)
この3点が明確になると、調査手法の選択と結果の分析がスムーズになります。
現場調査の3つの方法
方法① 業務時間の計測(タイムスタディ)
最も客観的なデータが得られる方法です。対象業務にかかる時間をストップウォッチやスマートフォンのタイマーで計測し、記録します。
実施のポイント:
- 複数日・複数人のデータを取ることで、曜日や個人差による偏りを避ける
- 「計測される」ことを意識してスタッフの動きが変わる場合があるため、日常業務の延長として自然に実施できる環境を整える
- 業務ログを記録する際は「主業務」「付随業務(確認・移動など)」を分けて記録すると、後の分析に役立つ
計測する業務の例:
| 業務 | 計測対象 |
|---|---|
| 申し送り | 開始〜終了時間・参加人数 |
| 看護記録 | 1件あたりの入力時間 |
| 物品準備 | 処置前準備にかかる時間 |
| 内線・電話対応 | 1回あたりの所要時間・件数 |
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方法② インタビュー・アンケート
スタッフが感じている「負担感」や「改善してほしい点」を直接収集する方法です。タイムスタディでは数値化しにくい「やりにくさ」や「属人化している業務」を把握するのに適しています。
インタビューのコツ:
- オープンクエスチョン(「一番大変な業務は何ですか?」)とクローズドクエスチョン(「申し送りに20分以上かかっていますか?」)を組み合わせる
- 管理職が同席すると本音が出にくいため、委員が個別に話を聞く場を設ける
- 「意見を言っても何も変わらない」という諦め感を持つスタッフも多いため、「調査結果は必ずフィードバックする」と事前に伝えておく
アンケートの活用場面:
- スタッフ数が多く個別インタビューが難しい場合
- 匿名性を確保して本音を集めたい場合
- 経時変化(改善前後の比較)を数値で追いたい場合
方法③ 業務プロセスの観察(ワークサンプリング)
実際の業務現場を観察し、誰が・何を・どのくらいの頻度で行っているかを記録する方法です。当事者が気づいていない「無意識の業務」や「手順の重複」を発見するのに有効です。
実施上の注意:
- 観察者が現場に入ることでスタッフへのプレッシャーにならないよう配慮する
- 観察結果をもとに「この業務はなぜこの手順で行っているか」をスタッフに確認するヒアリングをセットで行うと、より正確な実態把握ができる
調査結果の整理と課題の絞り込み
調査で得られたデータをそのまま見ても、何をすべきかはすぐにはわかりません。以下の視点で整理することで、改善の優先度をつけやすくなります。

整理の視点
- 頻度が高く・時間がかかっている業務→改善効果が大きい候補
- 複数のスタッフが「大変」と感じている業務→現場への影響が大きい課題
- 他職種・他部署との連携に手間がかかっているプロセス→タスクシフトやICT活用の候補
この段階でも、「全部改善しよう」とせず、前半記事で設定した目標に照らして優先度1〜2つに絞ることが大切です。
調査結果をもとにした改善策の実施
現場調査で課題が明確になったら、具体的な改善策を検討し、実施に移します。看護現場でよく活用される改善策の例を紹介します。
タスクシフト・タスクシェア
看護師が担っている業務の一部を、他職種や看護補助者に移行することで、看護師の直接ケアに使える時間を増やす取り組みです。厚生労働省もその推進を明示しており、実施にあたっては現場調査のデータが根拠として機能します。
シフト候補の例:
- 物品の補充・管理 → 看護補助者
- 検査結果の確認・転記 → 事務職員
- 患者の移送 → 看護補助者との協働
石川県の浅ノ川総合病院では看護師から事務職員へ入院業務の移管を進めました。これは、メディカルギークのscreeを導入したことで入院時の問診など看護師以外でも対応できるように業務整理・タスクシフトの準備の一環として行われたものです。事例はこちら。

業務プロセスの標準化
属人化している業務や、スタッフによって手順がバラバラな業務は、標準化することで全体の効率と質を安定させることができます。チェックリストや手順書の整備が有効です。
ICT・ツールの活用
電子カルテの入力補助機能や、申し送りの音声・動画記録など、ツールを活用した時間短縮も有効な選択肢です。ただし、導入前に「現場が使いこなせるか」の確認と、スタッフへの説明・練習時間の確保が不可欠です。

改善実施後の評価:PDCAサイクルで継続的に改善する
改善策を実施したら、必ず「効果があったか」を評価します。調査時に計測した数値(所要時間・負担感スコアなど)を改善後にも同じ方法で測定し、比較します。
評価のポイント
- 数値だけでなく、スタッフへの「やってみてどうでしたか?」という声かけも重要
- 期待した効果が出なかった場合、「目標設定が適切だったか」「調査で見落とした要因はないか」を振り返る
- 一度の改善で完結させようとせず、評価→見直し→再実施のサイクル(PDCA)を繰り返すことで、継続的な改善文化が根付いていく
まとめ
看護現場の業務改善は、感覚ではなく「現場調査によるデータ」を基盤にすることで、説得力と実効性が大きく高まります。
本記事のポイントをまとめます。
- 現場調査の前に「何を・なぜ・どう使うか」の調査目的を明確にする
- タイムスタディ・インタビュー・観察の3つを目的に合わせて使い分ける
- 調査結果は「頻度×負担感×連携の手間」の視点で整理し、優先度を絞り込む
- 改善策はタスクシフト・標準化・ICT活用などを現場の実態に合わせて選択する
- 実施後は必ず効果を評価し、PDCAサイクルで継続的に改善を続ける
業務改善に「完成形」はありません。現場の声を聞き続け、データで確認し、少しずつ変えていく積み重ねが、看護師が働きやすい環境をつくっていきます。
目標設定の方法については、前半記事もあわせてご覧ください。

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参考記事
- 厚生労働省「タスク・シフト/シェアの推進について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000095525_00010.html - 公益財団法人日本看護協会「2022年 病院看護実態調査」
https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/research/97.pdf






