看護師の業務改善を成功させる①|目標設定方法と現場での実践ポイント
「業務改善を任されたけど、何から始めればいいかわからない」
「目標を立てたのに、いつの間にか有名無実になってしまった」
業務改善委員を初めて経験する看護師から、こうした声をよく聞きます。
看護現場での業務改善は、多忙な日常業務と並行して進めなければならないうえ、成果が見えにくく、モチベーションを維持するのが難しい取り組みです。しかし、最初の「目標設定」さえ正しくできれば、その後の活動は驚くほどスムーズになります。
本記事では、業務改善の第一歩として最も重要な「目標設定」の方法を、看護現場に即した具体例をもとに解説します。これから業務改善に取り組む方も、過去にうまくいかなかった経験がある方も、ぜひ参考にしてください。
- 業務改善委員になった看護師
- 目標設定の段階で行き詰まりを感じている看護師
- 病棟の業務改善が形骸化していると感じている看護師長・看護部長
- スタッフの離職防止・定着促進のために業務環境の改善を検討している管理職
なぜ、看護現場の業務改善は「目標設定」から失敗するのか
看護師の離職率は依然として高水準にあります。公益財団法人日本看護協会の調査によれば、2022年度の病院における看護職員の離職率は11.6%(常勤)であり、業務負担の重さが離職理由の上位に挙げられ続けています(日本看護協会, 2023)。
こうした背景から、多くの病院が「業務改善」に取り組んでいますが、現場では「何となく活動して、何となく終わった」という結果に終わるケースも少なくありません。その根本原因の多くが、出発点である目標設定の曖昧さにあります。
「業務を効率化する」「残業を減らす」などは方向性としては正しいですが、目標としては不十分です。何を・どれだけ・いつまでに改善するかが明確でなければ、成果の評価も、メンバーの動かし方も、途中経過の確認もできません。
業務改善の成功率を高める最初のステップは、ゴールをきちんと言語化することです。

目標設定のフレームワーク:SMART目標とは
業務改善の目標設定で広く使われているのが「SMART目標」です。もともとビジネスや組織マネジメントの領域で生まれたフレームワークですが、看護現場の業務改善でも活用できます。
SMARTとは以下の5つの要素の頭文字を組み合わせたものです。
S|Specific(具体的)
「何を改善するか」を明確にします。
✗「看護記録を効率化する」
✓「退院サマリーの記録にかかる時間を短縮する」
対象業務・対象範囲・改善内容を絞り込むほど、活動の方向性がブレにくくなります。
M|Measurable(測定可能)
成果を数値で確認できる目標にします。
✗「会議の時間を短くする」
✓「月1回の業務会議を現行60分から40分以内に短縮する」
数値がなければ「改善できたかどうか」を客観的に判断できません。定量化が難しいテーマは、アンケートによる満足度スコアなど代替指標の設計も検討しましょう。

A|Achievable(達成可能)
現状のリソース(人・時間・予算)で達成できる範囲に設定します。
✗「全業務の無駄を3か月でゼロにする」
✓「申し送り業務の一部をペーパーレス化し、所要時間を週あたり○時間削減する」
高すぎる目標は早期の挫折につながります。「少し背伸びすれば届く」レベルが最もモチベーションを維持しやすいとされています(Locke & Latham, 目標設定理論)。
R|Relevant(関連性がある)
病棟・病院全体の課題や方針と連動した目標かどうかを確認します。
たとえば「残業時間の削減」が病院の重点課題であれば、それに直結する業務の改善を目標にすることで、上司や組織からの協力も得やすくなります。
個人的な「やりたいこと」と、組織が「解決したいこと」を一致させる視点が重要です。
病院の場合、残業代・採用関連費など人材にかかるコストが甚大であるといわれています。離職率も高く、お金をかけて採用した人がすぐに辞めてまたお金をかけて採用するの繰り返しは経営へのインパクトが大きいもの。「今働く人が働きやすくする→離職率を下げる」という発想は業務改善の本質的なゴールになります。
メディカルギーク株式会社が提供する入院業務支援サービス「scree(スクリー)」は、この根本の業務改善を支援します。screeは、新規入院患者の情報を収集し、その情報を基に作成する各種帳票を効率的に作成できるサービスです。
主に看護師に利用されていますが、外来・薬局・リハビリテーション科での問診にも活用いただいています。

screeの主な機能は?
- スマホでの事前入力機能
患者やご家族が、来院前に問診を自宅で入力できます。これにより、看護師の情報収集時間が大幅に削減されます。収集されたデータは構造化されて帳票作成・カルテへの連携もされるため、迅速かつ正確に記録を完成させることができます。 - リピーター入力自動機能
一度退院した患者が再入院した場合、前回の問診データや基礎情報を参照し、自動で入力できます。反復的な情報入力の負荷を完全に排除し、再入院時の記録時間を劇的に短縮します。これは、慢性期疾患の患者が多い施設や、入退院を繰り返す急性期病院において、記録時間の短縮に最も直接的に貢献する要素です。 - 自動帳票作成機能
収集された情報に基づき、アセスメントシートやスクリーニングシートといった必要な帳票を自動的に作成します。看護師は情報の転記や、帳票の作成にかかる時間をぐっと短縮することができます。
screeは単なる電子カルテの補助ツールではなく、業務のボトルネックを根本的に解消するためのサービスです。

T|Time-bound(期限がある)
「いつまでに達成するか」を必ず設定します。
✗「なるべく早く改善する」
✓「○月末までにプロトタイプ運用を開始し、○月末までに効果測定を完了する」
期限のない目標は「いつでもできる」という心理的余裕を生み、後回しになりがちです。中間チェックポイントを設けると、進捗確認もしやすくなります。

看護現場でのSMART目標:具体例
抽象的な業務改善テーマをSMART目標に落とし込んだ例を紹介します。
| 曖昧な目標 | SMART目標に変換した例 |
|---|---|
| 申し送りを短くしたい | 申し送り時間を現行平均20分から12分以内に短縮する。○月末までに試験運用開始。 |
| 物品管理を改善したい | 処置室の消耗品の在庫切れ発生件数を、現行月平均5件から1件以下に減らす。3か月以内に達成。 |
| 看護記録の残業を減らしたい | 記録業務による時間外労働を、現行1人あたり月平均○時間から△時間に削減する。○月末までに効果測定。 |
目標の粒度はチームの規模や改善サイクルによって調整してください。最初から完璧な目標を立てようとせず、活動しながら修正する柔軟さも重要です。
実際の目標設定の進め方:4つのステップ
ステップ1|現状を数字で把握する
目標設定の前に、まず「今どうなっているか」を把握することが不可欠です。感覚で「〇〇が大変」と思っていることも、実際に計測してみると予想と異なるケースがあります。
業務時間の計測、インシデント発生件数の確認、スタッフへのアンケートなど、できる範囲でデータを集めましょう。現状把握の具体的な方法は、後半記事で詳しく解説しています。

ステップ2|課題を絞り込む
現状把握で見えてきた問題点をすべて解決しようとするのは禁物です。影響が大きく、かつ改善の余地がある課題を1〜2つに絞ることが、活動を前進させる鍵です。
「スタッフが一番困っていること」と「データで確認できる問題」の両方を参照しながら優先順位をつけましょう。
ステップ3|SMART基準で目標を言語化する
絞り込んだ課題をもとに、前述のSMART基準で目標を言語化します。この段階では、チームメンバーや上司を巻き込んで一緒に目標を作ることが大切です。
トップダウンで決めた目標より、自分たちで設定した目標のほうが当事者意識が高まり、取り組みの継続性が増します。
ステップ4|行動計画と評価指標を設定する
目標が決まったら、それを達成するための具体的なアクションと、進捗を確認する指標を設定します。
「誰が・何を・いつまでに行うか」をリスト化し、定期的な振り返りの機会(月1回など)を設けることで、活動が有名無実化するのを防ぐことができます。

目標設定でよくある失敗と対処法
失敗①:目標が多すぎる
一度にすべてを改善しようとすると、エネルギーが分散します。まず1つに集中し、成果を出してから次に進む「小さな成功体験」の積み重ねが、チームの自信とモチベーションにつながります。
失敗②:現場スタッフが置いてきぼり
委員会だけで目標を決め、あとから現場に「やってください」と伝えると反発を招きがちです。目標設定の段階から現場スタッフの意見を聞き、「自分たちの問題」として捉えてもらえるよう工夫しましょう。

失敗③:進捗を確認する仕組みがない
目標を立てたまま振り返らないと、いつの間にか活動が止まります。中間チェックのタイミングをあらかじめカレンダーに入れ、定期的に「今どこまで来ているか」を確認する習慣をつくりましょう。
まとめ
看護現場の業務改善を成功に導くには、曖昧な「なんとなく改善したい」を、具体的で測定可能な目標に変換することが第一歩です。
SMART目標の5要素(Specific・Measurable・Achievable・Relevant・Time-bound)を意識しながら目標を設定し、チームで共有することで、活動全体の方向性が整い、成果を評価できる改善活動が実現します。
本記事のポイントをまとめます。
- 業務改善が失敗する最大の原因は、目標の曖昧さ
- SMART目標は看護現場の業務改善にも有効なフレームワーク
- 目標設定はトップダウンではなく、現場を巻き込んで一緒に作る
- 設定後は定期的な進捗確認の仕組みをセットで用意する
目標が決まれば、次は「現状を正確に把握すること」が重要になります。具体的な現状調査の方法については、後半記事「業務改善の準備② 現場の調査から見えてくるもの」をご覧ください。
「人材確保が課題」
「業務改善どころではないが、業務改善しないと人も集まらない」
そのようにお考えの病院経営者様、看護部長様へ。
メディカルギークは、業務改善ソリューションをご提供しています。
特に、看護師の声から生まれた「scree(スクリー)」は、最も大きく時間を使う記録業務で入院時の情報収集から記録までを今よりも簡単にできるサービスです。
screeはただのITツールではありません。
- 病院の現場フローに即した、直感的なデザイン
- 病院ごとの帳票に合わせ、専門家が効率化させた個別カスタマイズ仕様
- 小児や周産期など、専門領域にも対応可能
- 看護師だけでなく他職種の記録業務も解決できる
看護師の経験を持つ担当者が貴院の課題を丁寧にヒアリングし、screeの導入がどのように貢献できるか、具体的な活用方法をご提案させていただきます。
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参考資料
- 公益財団法人日本看護協会「2022年 病院看護実態調査」
https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/research/97.pdf - Locke, E. A., & Latham, G. P.「A Theory of Goal Setting & Task Performance」(1990, Prentice Hall)






