標準型電子カルテとは?看護師・情シスが知っておくべき背景・現状・業務改善への影響を解説
「標準型電子カルテって、うちの病院に関係ある話なの?」「何か対応しないといけないの?」
2022年に政府が「医療DX推進本部」を設立して以降、医療現場では「医療DX」「標準型電子カルテ」という言葉を目にする機会が増えました。しかし、看護部長や情報システム担当者のなかには「なんとなく国が進めている話」という認識にとどまっている方も多いのではないでしょうか。
標準型電子カルテは、対象が段階的に拡大しており、中小病院も将来的な対応が求められる流れになっています。 正確な情報をもとに現状を理解しておくことが、今後の院内システム判断においても重要です。
本記事では、標準型電子カルテとは何か、なぜ推進されているのか、スケジュールと現状はどうなっているのかを、厚生労働省・デジタル庁の公式資料をもとに正確に解説します。そのうえで、電子カルテの整備が看護業務の改善にどうつながるかも考えます。
- 業務改善が必要だとわかっているが、何から手をつければいいか迷っている看護師
- スタッフの疲弊や離職が続いており、職場環境の立て直しを考えている看護部長・看護師長
- 「記録が終わらない」「入院業務が多すぎる」という現場の声に応えたい管理職
- 業務改善を進めたいが、ツールや外部サポートの活用に踏み切れていない方
なぜ「標準型電子カルテ」が必要になったのか

現状の課題:電子カルテはあるが「つながらない」
日本の病院における電子カルテの普及率は、厚生労働省の医療施設調査によれば2022年時点で400床以上の病院では91.2%に達しています。一方、200床未満の中小病院や診療所では普及が遅れており、全体ではまだ半数前後にとどまっています(厚生労働省, 2022)。
しかし、普及以上に大きな問題があります。それが「システム間の断絶」です。
現在の電子カルテは、各ベンダーが独自仕様で開発しているため、異なるメーカーのシステム間でデータをやり取りすることが難しい構造になっています。その結果、
- 患者が転院しても、電子情報が引き継がれず紙の紹介状に頼る
- 診療所と病院で同じ患者の情報が二重に管理される
- 退院後に在宅サービスや地域医療機関と情報を共有しにくい
という非効率が、現場で慢性化しています。
政府の方針:2030年までに「全医療機関」で電子カルテを
政府は2023年6月に「医療DXの推進に関する工程表」を策定し、「遅くとも2030年には、概ねすべての医療機関において患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す」という明確な目標を示しました(医療DX推進本部, 2023)。
この目標を実現するための核となるのが、標準型電子カルテです。

標準型電子カルテの3つの特徴
標準型電子カルテは、厚生労働省・デジタル庁が主導して開発・普及を推進する、クラウド型の電子カルテシステムです。従来の電子カルテとの最大の違いは、以下の3点です。
① 国際標準規格(HL7 FHIR)に準拠
「HL7 FHIR(ファイア)」は、医療情報の記述・交換に関する国際標準規格です。これに準拠することで、異なるベンダーのシステム間でも患者情報のやり取りが可能になります。従来のベンダー独自仕様の壁を超えた「つながる電子カルテ」が実現します。
② クラウド型・マルチテナント方式
標準型電子カルテは、クラウド上で動作し、複数の医療機関が同一システムを共同利用できるマルチテナント方式(SaaS型)を採用します。これにより、個別に高額なシステムを導入する必要がなく、中小規模の医療機関でも低コストで導入できることが期待されています。
③ 標準APIによる外部連携
他のシステム・サービスとのデータ連携を可能にする標準APIを搭載します。将来的には、電子処方箋・マイナ保険証・全国医療情報プラットフォームとシームレスに接続できる設計です。

標準型電子カルテの現在のスケジュール
原文記事を含め、ネット上の情報では標準型電子カルテのスケジュールに誤りや古い情報が混在しています。以下は、厚生労働省の最新資料をもとに整理した正確なロードマップです。(2025年3月現在)
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2024年4月 | デジタル庁がFIXER社に標準型電子カルテ(α版)の開発を委託 |
| 2025年度(α版) | 無床診療所を対象とした試験運用(モデル事業)を開始 |
| 2025年度中 | 標準型電子カルテの本格運用の具体的内容を公表予定。医科診療所向け電子カルテの標準仕様(基本要件)を策定予定 |
| 2026年度中目途 | 標準型電子カルテの完成を目指す(厚生労働省, 2025) |
| 2030年度まで | 概ねすべての医療機関で電子カルテの導入を目指す |
※2025年時点での標準型電子カルテは、主に無床診療所が対象のα版段階です。 病院向けの標準仕様は2025年度中の策定を目指して協議が進んでいる段階であり、病院が直接対応を迫られる時期はまだ先です。
ただし、「次回システム更改のタイミングで、情報共有サービス対応への改修を求められる」という流れは大きな病院にも及んでおり、情シス担当者は中長期での計画が必要です。
「3文書6情報」の標準化|看護師に直接関係する部分
標準型電子カルテの普及と合わせて推進されているのが、「3文書6情報」の標準化です。
3文書
- 診療情報提供書(紹介状)
- 退院サマリー
- 健診結果報告書
6情報
- 傷病名・アレルギー情報・感染症情報・薬剤禁忌情報・検査情報・処方情報
これらの情報を標準規格で記録・共有できるようにすることで、転院・地域連携時に紙の紹介状や電話での情報確認が不要になります。
看護師にとっては、退院サマリーの作成・共有が電子的に標準化されるという点が最も直接的な影響です。転院先や訪問看護ステーションへの情報連携が効率化されることで、情報の抜け漏れや確認業務の負担が減ることが期待されます。

電子カルテの整備と看護業務改善はセット?
標準型電子カルテの普及は、医療機関間の情報連携を改善する「インフラ整備」です。しかし、インフラが整っても、電子カルテに入力する情報の質と効率が変わらなければ、看護師の記録負担は減りません。
多くの病院で課題になっているのが、入院前後の情報収集〜記録〜帳票作成という一連の工程です。標準化されたデータを正確・迅速に入力できる体制を整えることが、標準型電子カルテを有効活用するための前提条件になります。
看護師の残業理由トップは「記録」。特に入院時の情報収集〜記録に要する膨大な時間は、残業の理由にもなっています。
メディカルギーク株式会社が提供する入院業務支援サービス「scree(スクリー)」は、この最大のボトルネックを解決するために開発されました。screeは、看護師が新規入院患者の情報を収集し、その情報を基に作成する各種帳票を効率的に作成できるサービスです。

screeの主な機能は?
- スマホでの事前入力機能
患者やご家族が、来院前に問診を自宅で入力できます。これにより、看護師の情報収集時間が大幅に削減されます。収集されたデータは構造化されて帳票作成・カルテへの連携もされるため、迅速かつ正確に記録を完成させることができます。 - リピーター入力自動機能
一度退院した患者が再入院した場合、前回の問診データや基礎情報を参照し、自動で入力できます。反復的な情報入力の負荷を完全に排除し、再入院時の記録時間を劇的に短縮します。これは、慢性期疾患の患者が多い施設や、入退院を繰り返す急性期病院において、記録時間の短縮に最も直接的に貢献する要素です。 - 自動帳票作成機能
収集された情報に基づき、アセスメントシートやスクリーニングシートといった必要な帳票を自動的に作成します。看護師は情報の転記や、帳票の作成にかかる時間をぐっと短縮することができます。
screeは単なる電子カルテの補助ツールではなく、統計的に証明された看護業務のボトルネック(情報収集の負荷)を根本的に解消するためのサービスです。

補助金の活用:システム改修のコスト負担を抑える
電子カルテの標準化対応には費用がかかります。しかし、政府は医療機関向けの補助金を用意しています。
- 電子カルテ情報共有サービスへの対応改修費用:病院規模に応じて最大約657万円まで補助(事業費の1/2)
- 申請期間:2024年3月〜2031年9月30日(厚生労働省, 2024)
情シス担当者は、次回のシステム更改のタイミングと補助金の申請期限を照らし合わせながら、中期計画を立てておくことが重要です。
まとめ
標準型電子カルテの要点を整理します。
- 現行電子カルテの「つながらない」という課題を解決するために、政府が推進するクラウド型・標準規格準拠の電子カルテ
- 2025年度は無床診療所向けα版の試験運用段階。病院向けの標準仕様は2025年度中の策定を目指して協議中
- 最終目標は2030年までに概ねすべての医療機関で電子カルテ導入
- 看護師に直接関わるのは「退院サマリー等の電子的共有」と「入力データの標準化」
- インフラ整備と並行して、情報収集〜記録〜帳票作成の上流プロセスを整えることが現場の業務改善につながる
- 補助金制度を活用し、システム更改のタイミングで計画的に対応することが得策
標準型電子カルテは「いつか来る話」ではなく、情シス・看護管理職がいま動き方を検討すべき課題です。正確な情報をもとに、自院の対応計画を整理しておきましょう。
screeは、情報収集の自動化、リピーターのデータ再利用、および自動帳票作成機能を通じて、初期の記録負荷を最小化します。これにより、初期アセスメントの質が向上するだけでなく、その後の経過記録(SOAPなど)がスムーズになります。
結果として、看護師は情報収集や転記作業から解放され、情報共有や申し送りの効率も向上します。 看護師が患者・家族に寄り添うケアを実現するために、メディカルギークの「scree」の導入をぜひご検討ください。
参考(公式資料)
- 医療DX推進本部「医療DXの推進に関する工程表」(2023年6月)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/iryodx/index.html - 厚生労働省「電子処方箋・電子カルテの目標設定等について」(2025年7月)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001511375.pdf - 厚生労働省「第2回標準型電子カルテ検討ワーキンググループ資料」(2024年3月)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38765.html - 厚生労働省「医療施設調査」(2022年)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/22/index.html
※本記事の情報は2025年3月時点のものです。政策・スケジュールは変更される可能性があるため、最新情報は厚生労働省・デジタル庁の公式資料をご確認ください。






