【人件費削減の鍵は「離職防止」】看護師の給与と病院経営のバランスとは?

集まらない人材、止まらない離職。
病院経営を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。特に人件費の増加や高騰する採用コストは、多くの病院で赤字経営に直結する大きな要因となっています[1]。その中でも、人件費の大部分を占める看護職員の給与と、そのコスト構造は、持続可能な病院経営を考える上で避けて通れないテーマです。
全日本病院協会の調査では、常勤看護師の採用に要した費用は平均で476万円。紹介会社経由だと567.7万円、紹介会社以外だと84.1万円と、紹介会社経由が明らかに採用費を押し上げていることが見て取れます[2]。
医療の質を維持しつつ、健全な経営を実現するためには、人件費を単なるコストとして捉えるのではなく、戦略的な視点から見直すことが不可欠です。
この記事では、人件費削減の戦略としての「離職防止」に焦点を当てて解説します。
- 人件費高騰、採用難、看護師の離職率増加といった経営課題に直面しており、コスト削減と持続可能な病院経営戦略を模索している病院経営者、事務の方。
- 看護師の業務負担軽減、定着率向上、働きがいのある職場環境の構築に関心があり、具体的な解決策を探している看護管理の方。
- テクノロジーを活用した業務効率化や、医療現場のデジタル変革に関心があり、具体的なソリューション導入を検討している医療DX推進担当の方。
増加する人件費と看護師の「リアルな給与」のギャップ
厚生労働省の統計によると、看護師の平均年収は519万7000円(平均年齢41.2歳)であり、平均月収は36万4000円とされています[3]。手取りに換算すると、平均年収は390万〜416万円、月収は27万〜29万円程度となるでしょう。
これは他業種と比較しても決して低い水準ではありませんが、看護師の専門性と責任の重さを考えると、十分とは言えないという声も少なくありません。
看護師は病院の中で一番多い職種であることから、病院の人件費の42.5%は看護師であると言われています[4]。特に、診療報酬改定による収益の変動や、医療機器の導入費用など、多岐にわたる支出がある中で、人件費の占める割合の大きさは無視できない要素です。
しかし、看護職員側から見ると、基本給の上昇率は長年停滞しているのが実情です。ある調査では、看護職員の基本給が12年間で6,000円弱しか上がっていないという報告もあり[5]、これは物価上昇率や他業種の給与上昇と比較しても非常に緩やかな伸びと言えます。この状況は、看護師たちの生活を圧迫し、離職の原因にもなりかねません。
この「人件費を抑えたい」という意向と、「給料が上がらない」という不満のアンバランスな状況が、病院経営の課題と職員のモチベーションの間に深く横たわっています。このギャップが埋まらない限り、看護師の離職率は高止まりし、結果的に病院経営にさらなる負担をかけることになります。

看護師の離職による深刻な実態・採用難

採用難は多くの業界に共通する問題ですが、特に看護師の離職が病院経営にもたらす経済的損失は非常に深刻です。2023年度の正規雇用看護職員の離職率は11.3%と報告されており、これは安定した医療の提供への大きな懸念材料となります[6]。
この数字は、単なる従業員が一人減るという問題に留まらず、病院全体の機能不全に繋がりかねないことを示唆しています。
国外の報告では、1人の看護師を採用し、もし1年以内に離職された場合、その看護師の年収分に相当する経済的損失があると試算されています。これは単なる試算ではなく、具体的なコストとして病院経営を圧迫します[7]。
この損失は、単なる採用活動にかかるコストに留まりません。その内訳は多岐にわたり、見えないコストも膨大です。
- 採用コスト: 求人広告費、紹介会社への手数料、採用活動にかかる人件費など。特に看護師不足が深刻な地域では、この費用が高騰する傾向にあります。
- 教育・研修コスト: 新しい看護師へのオリエンテーション・OJT・専門研修などにかかる時間的・金銭的費用。経験の浅い看護師であればあるほど、このコストは大きくなります。
- 引き継ぎによる既存職員の負担増: 離職者が出た分の業務が既存の看護師にのしかかり、過重労働やストレスの原因となります。これにより、既存職員のエンゲージメント低下や、さらなる離職を誘発する「負の連鎖」が始まる可能性もあります。
- 質の高い看護サービスの提供機会の逸失: 経験豊富な看護師の離職は、患者さんへの質の高いケアの提供に影響を及ぼします。これは、患者満足度の低下や、病院の評判悪化にも繋がりかねない重要な問題です。
- 医療事故リスクの増加: 人員不足や業務過多は、看護師の注意力散漫を招き、医療事故のリスクを高める可能性があります。これは、患者の安全を脅かすだけでなく、病院の信頼性にも大きな打撃を与えます。
さらに、離職が複数発生すると、その背景にある「過重労働」や「サポートの低い職場環境」、「不十分な給料」といった本質的な問題が、職場の文化として根付いてしまう恐れがあります。これは、さらなる離職を招く悪循環を生み出し、病院全体の活力を奪ってしまうことにも繋がりかねません。
「今いる職員を大切にする」離職防止がコスト削減の鍵
本質的なコスト削減、そして安定した病院経営を目指すためには、「人件費=単なるコスト」という視点から脱却し、「業務負担の軽減による離職防止と定着」に積極的に投資することが重要です。これが、結果的に高額な採用コストや離職による目に見えない損失を回避する、最も安価で安定した戦略となります。
「看護師の給料を上げる」という直接的な人件費増が困難な状況でも、業務効率化によって業務負担を顕現して働きやすい環境を作ることは、間接的に看護師の満足度を高め、離職率の低下に寄与します。例えば、AI・ICTを活用することで、対面や電話で行っていた問診をWebで一元化し、看護師が行っていた事務業務を削減・移譲することで、業務負荷を軽減した事例も存在します。

このように、テクノロジーの力を借りて業務プロセスを見直し、効率化を図ることは、看護師が本来の業務に集中できる環境を整え、働きがいを高めることに直結します。
病院経営者は、目先のコスト削減だけでなく、長期的な視点に立って、看護師が働きやすい環境を整備するための投資が求められます。
「scree」による看護師の負担軽減が離職防止へ

こうした背景の中で、看護職員の負担を抜本的に軽減し、離職防止につなげる具体的なソリューションとして、メディカルギーク株式会社が提供する入院業務支援サービス「scree(スクリー)」があります。
screeは、入院患者の情報を収集し、その情報を基に作成するアセスメントシートやスクリーニングシートを自動的に作成するサービスです。
screeを導入することで、以下の具体的な負担軽減とメリットが期待できます。
- 煩雑な書類作成・データ入力からの解放: 入院時の情報収集からアセスメントシート作成までのプロセスは、多くの時間と精神力を要する看護業務の一つです。screeはこれらの定型業務を自動化することで、看護師は情報入力にかかる時間を大幅に削減し、より重要な業務に集中できるようになります。これにより、残業時間の削減や精神的な負担の軽減にも繋がります。
- 情報共有の迅速化とミスの削減: 自動化されたシステムにより、患者情報はリアルタイムで一元管理され、チーム全体での情報共有がスムーズになります。手作業による転記ミスや情報漏れのリスクも減少し、医療安全の向上に貢献します。
- 「質の高いケア」の時間の確保: 書類業務に割いていた時間が削減されることで、看護師は患者さんのベッドサイドに行く時間、つまり患者やその家族に寄り添う「質の高いケア」を提供するための時間を十分に確保できるようになります。患者さんとのコミュニケーションを深め、個別性のあるケアを提供することは、患者満足度向上だけでなく、看護師自身のやりがいにも直結します。
- 新人看護師の育成支援: 新人看護師は、慣れない業務や多忙な状況の中で、アセスメントシート作成に苦慮することが少なくありません。screeのようなツールがあれば、定型業務の負担が軽減され、より実践的な看護スキルや患者さんとの関わりに集中できるため、早期の戦力化と定着にも貢献します。
新規看護師を一人雇うコスト(年収相当の損失リスクを含む、数百万〜1000万円以上とされる試算もあります)と比較すれば、screeのような業務支援サービスを導入することは、継続的な業務効率化と職員の定着に繋がり、長期的に見て遥かに安価で安定した投資となります。

人件費戦略の再構築で持続可能な病院経営を
病院経営における人件費の問題は、単なるコスト削減という短期的な視点だけでは解決できません。看護師の離職がもたらす長期的な損失と、それが病院経営全体に与える負の影響を深く理解し、その上で「今いる職員を大切にする」という視点に立った戦略的な人件費運用が求められます。
screeの導入は、看護師の負担を軽減し、彼らが「質の高いケア」に集中できる環境を創出します。これは、看護師の働きがい向上、離職率低下、そして病院全体の医療サービス向上へと繋がり、結果として採用コストの削減と安定した病院経営に貢献すると考えられます。
病院における人件費の最適化は、看護師の給料という直接的な課題解決だけでなく、業務の質を高め、組織全体の健全性を保つための重要な経営戦略なのです。
メディカルギークでは、入退院支援をもっとシンプルにするお手伝いとして「scree 」の提供を行っています。入院時の帳票をすべて貴院オリジナルにカスタマイズされたアプリで提供。情報収集から記録までの業務をぐっと効率化し、最大1/3まで業務を削減することができます。
【参考・引用文献】
- https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA3017D0Q5A930C2000000/
- https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/201001_2.pdf
- https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450091&tstat=000001011429
- https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001479599.pdf
- https://www.joint-kaigo.com/articles/38754/
- https://www.jil.go.jp/kokunai/topics/mm/20250416b.html
- https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2013/PA03024_03




