看護師が担う入退院支援とは?高齢化時代に求められる役割と実践のポイント

「退院支援は大切」とわかっていても、日々の業務に追われて十分に取り組めない——そんな声を多くの病棟で耳にします。 しかし、高齢化が加速する日本においては、入退院支援はもはや「できればやる業務」ではなく、病院機能の根幹を担う重要な取り組みになっています。
本記事では、入退院支援が求められる背景をデータで整理した上で、看護師に期待される具体的な役割と実践のポイントを解説します。
- 入退院支援の体制づくりを検討している看護管理者・師長の方
- 業務改善委員として退院支援の見直しに取り組んでいる看護師の方
- 地域連携や多職種協働をどう進めるか悩んでいる方
1. 入退院支援が重要視される背景

高齢入院患者の増加と在院日数の長期化
厚生労働省「令和5年患者調査」によると、病院の退院患者の平均在院日数は29.3日です。年齢階級別では65歳以上が最も長く、高齢になるほど在院日数が長くなる傾向が顕著です[1]。
慢性疾患を複数抱えた高齢患者は、医療的なケアを終えた後も生活環境が整わなければ退院できないケースが多く、「医療は終わっているのに帰れない」という状況が在院日数を押し上げる一因となっています。
厚生労働省は2040年頃を見据えると、85歳以上で慢性疾患を複数抱える高齢者がさらに増加すると予測しており(日本看護協会「2024年 病院看護実態調査」)、この傾向は今後も続く見込みです[2]。

「家族がケアを担う」前提の崩壊
高齢患者を支えるはずの家族もまた高齢化しているケースが増えています。核家族化の進行や現役世代の減少により、退院後のケアを家族が担える環境は縮小しつつあります。
2022年時点で就業している看護職員数は約166万人ですが、2025年に必要とされる看護職員数は188万〜202万人と推計されており(厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ」)、医療側の担い手も十分とはいえません。病院が地域と連携しながら退院後の生活を支える仕組みを構築することが、今まさに急務となっています[3]。
2. 入退院支援の3つのフェーズ
入退院支援は「退院が決まってから動き出す」ものではありません。入院前から退院後までを見通した継続的な支援が重要です。
入院前の支援
- 退院後の生活を見据えた支援計画の立案
- 家族構成・介護力・在宅環境の事前評価
- 介護保険や福祉サービスの利用状況の確認

入院中の支援
- 早期退院を視野に入れたリハビリとの連携
- 患者・家族への療養指導(服薬管理、処置方法など)
- ケアマネージャーや訪問看護との早期連絡・情報共有
退院後のフォローアップ
- 訪問看護・地域包括支援センターとの継続的な連携
- 再入院リスクが高い患者への電話フォローや外来受診の調整
- フレイル対策・生活習慣改善への継続的な支援
3. 地域包括ケアシステムにおける看護師の位置づけ
厚生労働省が推進する地域包括ケアシステムは、「住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する」ことを目指しています。このシステムの中で、看護師は病院と地域をつなぐ「橋渡し役」として位置づけられています[4]。
病院内で完結していた時代の看護と、地域全体を視野に入れた現代の看護は、求められるスキルが大きく異なります。特に以下の3点が、現代の入退院支援において重要です。
多職種との調整力
ケアマネージャー、ソーシャルワーカー、訪問看護師、在宅医、リハビリスタッフなど、関わる職種は多岐にわたります。看護師がコーディネーターとして機能することで、支援の質が大きく変わります。
ICTを活用した情報共有
電子カルテや地域医療連携システムを活用し、病院と在宅・介護施設の間でリアルタイムに情報共有できる体制を整えることが、シームレスな支援の前提条件です。
予防的アプローチ
再入院を繰り返さないためには、退院後のフレイル対策や慢性疾患の自己管理支援が欠かせません。看護師が中心となった健康指導や生活習慣改善のサポートが、患者のQOL向上と医療費の適正化の両方に貢献します。

4. 現場で実践するための4つのポイント
① 家族の「介護力」を正確にアセスメントする
退院支援の計画を立てる際、患者本人だけでなく「家族が実際にどこまでケアを担えるか」を見極めることが重要です。家族も高齢の場合、複雑なケア手順を習得することや毎日の介護を継続することが難しいケースも多くあります。
訪問看護や介護保険サービスの活用、バリアフリー化・福祉用具の導入なども含めた現実的な計画を、患者・家族と一緒に組み立てることが求められます。
② 多職種との役割分担を「早期に・明確に」行う
入院直後から退院後の生活を想定し、どの職種が何を担当するかを明確にしておくことが、支援の漏れを防ぎます。「誰が何をするか曖昧なまま退院を迎える」という状況は、患者にとっても現場にとっても大きなリスクです。
退院支援カンファレンスを早期に開催し、ケアマネージャーや地域包括支援センターと情報共有する習慣を組織として作ることが重要です。
③ 服薬管理など「継続できる仕組み」を整える
慢性疾患を持つ高齢患者にとって、退院後の服薬管理は特に重要なテーマです。複数の薬を正確に管理することは高齢者には難しいケースも多く、薬剤師と連携した服薬カレンダーや一包化の活用、家族への説明など、「仕組みで管理できる体制」を整えることが再入院予防につながります。
④ ICTを積極的に活用する
家族が高齢で通院や電話相談が難しい場合、オンライン相談やリモートモニタリングの活用も選択肢に入ります。また、病院と地域の連携においては、記録を簡潔・的確にまとめ、必要な情報を適切なタイミングで共有する能力が、質の高い支援の土台となります。
メディカルギークのscreeは、入院時問診をタブレットでスムーズに進められる入退院支援サポートサービスです。予定入院の場合、患者・家族の事前入力も可能。看護師経験のある専門スタッフがサポートします。

まとめ
高齢化が進む中で、看護師の入退院支援の役割はますます重要になっています。「退院させる」ことがゴールではなく、「患者が地域で安心して生活を続けられる状態にする」ことが本来の目的です。
そのためには、病院内の視野だけでなく、在宅・地域を含めた広い視点を持ち、多職種と連携しながら継続的な支援体制を構築していくことが求められます。
入退院支援の質を高めることは、患者のQOL向上だけでなく、再入院の抑制や在院日数の適正化を通じて、病院経営にも直結する取り組みです。現場の看護師・看護管理者が主体的にこの課題に向き合うことが、これからの医療の質を決める鍵となります。
「私たちの病院でも、ITを活用した業務改善は可能だろうか?」
「まずは何から始めればいいのか、専門家の意見が聞きたい」
そのようにお考えの病院経営者様、看護部長様へ。 看護師経験のある専門家が業務整理を根本からお手伝いします。
まずはお気軽に資料請求や無料トライアルをお申し込みください。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年 患者調査の概況」(2024年)
- 日本看護協会「2024年 病院看護実態調査 報告書」(2025年) https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/101.pdfhttps://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/dl/kanjya.pdf
- 厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ」(2019年) https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001118187.pdf
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/





