看護師と電子カルテ——「使いにくい」を「使いこなせる」に変えるための基礎知識

電子カルテが当たり前になって久しい今も、現場では「入力に時間を取られて患者のそばを離れたくない」「操作に慣れるまでが辛い」という声が絶えません。一方で、うまく活用できている施設では記録業務が大幅に効率化され、看護の質を上げることにも貢献しています。
この差はどこから生まれるのでしょうか。本記事では、電子カルテの現状と課題を整理しつつ、看護師が現場で実践できる活用のコツと、今後の医療DXが看護業務にどう影響するかを解説します。
- 電子カルテ導入後も「慣れない・入力が遅い」と感じている看護師の方
- テンプレートや検索機能をほぼ使っておらず、もっと効率化したい方
- 転職・異動先で新しい電子カルテに切り替わり、早く操作に慣れたい方
- 医療DXの動向が気になる師長・看護管理者の方
電子カルテの普及状況
厚生労働省の医療施設調査(令和5年)によると、一般病院における電子カルテの普及率は約65%、診療所では約55%に達しています[1]。特に400床以上の大規模病院では9割近くが導入済みであり、看護師として病棟勤務をするなら電子カルテの操作スキルは事実上の必須要件となっています[2]。
政府はさらに踏み込んだ方針を示しています。「医療DX令和ビジョン2030」では、遅くとも2030年までにほぼすべての医療機関で電子カルテを導入することを目標に掲げており、2025年度中には標準型電子カルテのα版試行が開始されています[3]。紙カルテが残っている施設でも、数年以内に電子化の波は必ず届きます。
電子カルテを「使わされているもの」として受け身でいるより、仕組みを理解して使いこなす側に立つ方が、これからの看護師キャリアには確実にプラスになります。

看護師が感じる電子カルテの不便さとその背景
電子カルテへの不満は、根拠なく「慣れていないだけ」と片付けられがちです。しかし、構造的な問題が背景にあることを理解しておくことが重要です。

「記録が残業になる」という問題
厚生労働科学研究費補助金研究(47病院50病棟・955名対象のタイムスタディ調査)によると、1日の看護業務量の中で最も多い業務は「日々の看護実施記録」であり、残業として行われた業務でもっとも時間が長かったのも同じく「日々の看護実施記録」でした[4]。
電子カルテで記録が「見えやすく・後から修正できる」ようになった半面、入力すべき情報の粒度が上がり、「その場ですぐ入力しないと自分で仕事が止まってしまう」「未実施フラグが立つ」という制約が生まれました。入力タイミングを後回しにできなくなったことで、処置直後に端末に向かわざるを得ないシーンが増えています。
また、ニチイ学館が実施した看護業務量調査では、看護師の業務のうち事務作業が全体の約31%を占めているというデータも報告されています[5]。業務の3割が記録・入力作業という現実は、単純に「操作に慣れれば解決」とは言えない規模の問題です。
「オーダーを見落とす」という問題
紙カルテ時代は「指示あり棒」などの物理的なサインでオーダーを把握できていましたが、電子カルテではオーダー確認の方法がシステムによって異なり、入力・閲覧の習熟度が低いうちはオーダーの見落としリスクが生じます。
特に外来勤務では、電子カルテ端末の数が不足していると「医師への遠慮から入力が後回しになり残業化する」という構造的な問題も発生しています。
「看護の記録形式が多様」という問題
日本看護協会の「看護記録に関する指針」でも明記されているように、「看護記録の作成に時間を要すると、看護実践に必要な時間を確保することが困難となる事態も生じかねない」と指摘されています。記録形式(経時記録・SOAP・フォーカスチャーティングなど)は施設ごとに異なり、転職や部署異動のたびに学び直しが生じます[6]。
電子カルテを使いこなすための実践的な工夫
課題の構造を理解した上で、現場で実践できるアプローチを整理します。
①テンプレート・定型文を自分仕様にカスタマイズする
電子カルテの最大の武器は、繰り返し入力する内容をテンプレートとして登録できる点です。バイタルサインの所見コメント、日常的な処置記録、申し送り文の定型表現など、自分がよく使う表現をあらかじめ登録しておくことで、入力時間を大幅に短縮できます。
施設のテンプレートをそのまま使うだけでなく、「個人辞書」や「定型文登録」機能を活用して自分専用のショートカットを育てていくことが、長期的な効率化の鍵です。日本看護協会の「看護記録に関する指針」でも、「各施設で記録の様式や略語を定めることで、看護記録の効率化を図ることができる」とされています。

②検索・2画面表示・付箋機能でカルテ参照を速くする
電子カルテの大きなメリットのひとつは、患者の過去データを瞬時に検索・比較できることです。バイタルの経時変化、前回入院時の処置記録、アレルギー情報などを2画面で並べて確認しながらケアを行うと、紙カルテと比べて判断の速度と質が上がります。
よく参照する患者情報には付箋機能を使って目印をつけておく習慣も、業務の流れをスムーズにします。
③タブレット・スマートフォン活用でベッドサイド入力を習慣化する
「端末が空いていない」「ステーションに戻らないと入力できない」という問題の解決策として、タブレットやスマートフォンを利用した移動入力が普及しています。患者の検査室移動中や訪問看護の現場などで、その場でリアルタイム入力ができるため、後回しによる残業を防げます。処置と記録のタイムラグを減らすことで、「本来処置を行った時間」が正確に残せるという医療安全上のメリットもあります。
特に入院時アセスメントシートやスクリーニングシートの作成に要する膨大な時間は、「スクリーニング」のためにベッドサイドに行く時間が奪われるという矛盾を生み出しています。
メディカルギーク株式会社が提供する入院業務支援サービス「scree(スクリー)」は、この最大のボトルネックを解決するために開発されました。screeは、看護師が新規入院患者の情報を収集し、その情報を基に作成する各種帳票を効率的に作成できるサービスです。

screeの主な機能は?
- スマホでの事前入力機能
患者やご家族が、来院前に問診を自宅で入力できます。これにより、看護師の情報収集時間が大幅に削減されます。収集されたデータは構造化されて帳票作成・カルテへの連携もされるため、迅速かつ正確に記録を完成させることができます。 - リピーター入力自動機能
一度退院した患者が再入院した場合、前回の問診データや基礎情報を参照し、自動で入力できます。反復的な情報入力の負荷を完全に排除し、再入院時の記録時間を劇的に短縮します。これは、慢性期疾患の患者が多い施設や、入退院を繰り返す急性期病院において、記録時間の短縮に最も直接的に貢献する要素です。 - 自動帳票作成機能
収集された情報に基づき、アセスメントシートやスクリーニングシートといった必要な帳票を自動的に作成します。看護師は情報の転記や、帳票の作成にかかる時間をぐっと短縮することができます。
screeは単なる電子カルテの補助ツールではなく、統計的に証明された看護業務のボトルネック(情報収集の負荷)を根本的に解消するためのサービスです。

④病棟単位でのフィードバックループを作る
個人の工夫には限界があります。「このオーダー確認の画面が分かりにくい」「この入力フォームで見落としが起きやすい」といった声を師長やシステム担当者に届ける仕組みを作ることが、根本的な改善につながります。
電子カルテ導入の歴史の浅い施設や更新時期を迎えた施設では、現場の看護師の意見がシステム設計に反映されやすい時期でもあります。静岡・聖隷浜松病院(934床)では、電子カルテの更新時に看護師の意見を反映した運用設計を行い、食事形態・安静度のオーダー権限を看護師が持つことで誤嚥事故を減少させたという事例も日本看護協会のガイドラインで報告されています[7]。

電子カルテと看護師の今後
現在進行している医療DXの動きは、看護師の電子カルテ体験を大きく変える可能性があります。
政府の「医療DX令和ビジョン2030」では、3つの柱として「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテ情報の標準化」「診療報酬改定DX」が掲げられています。2025年度中には電子カルテ情報共有サービスの本格運用が予定されており、傷病名・アレルギー・感染症・薬剤禁忌・検査・処方の「6情報」が標準化された形で医療機関間を横断するようになります。
これが実現すると、転院・転職先でも患者の医療情報がすぐに確認できる環境が整い、入院時の問診重複や照会の電話が大幅に減る見込みです。看護師にとっては、「情報収集にかかる手間」が減ることで、本来の看護業務に充てる時間が増えることを意味します。
また、厚生労働科学研究の同調査では、ICTへの移譲が望まれる業務として「重症度・医療看護必要度の入力・チェック」「バイタルサインの測定」「申し送り」などが看護師から挙げられています。IoTセンサーやAI支援による自動入力補助の進展も、今後の看護記録業務の姿を変えていくでしょう。
まとめ
電子カルテは、使いこなすまでに時間と工夫がかかるツールである一方、慣れてしまえば紙カルテには戻れないほどの情報管理力を持つシステムでもあります。「使いにくい」という感覚の背景には、操作習熟の問題だけでなく、システム設計や業務フローとの乖離という構造的課題があることを認識した上で、できるところから実践的な活用を積み上げていくことが重要です。
2030年に向けて医療DXは加速しています。その波の中で、電子カルテを受け身に「こなす」から、能動的に「使いこなす」へ——その一歩が、看護師としての働きやすさにも、患者ケアの質にも確実につながります。
看護記録にかかる時間消費の最大の原因である「新規入院時の情報収集と初期アセスメントの負荷」を自動化するscreeの導入は、看護記録効率化のロードマップにおける最初のステップを効率化することにつながります。
screeは、情報収集の自動化、リピーターのデータ再利用、および自動帳票作成機能を通じて、初期の記録負荷を最小化します。これにより、初期アセスメントの質が向上するだけでなく、その後の経過記録(SOAPなど)がスムーズになります。
結果として、看護師は情報収集や転記作業から解放され、情報共有や申し送りの効率も向上します。 看護師が患者・家族に寄り添うケアを実現するために、メディカルギークの「scree」の導入をぜひご検討ください。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年 医療施設(静態・動態)調査」(2023年医療施設調査)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/23/
- JAHIS「病院情報システム導入調査結果報告 2024年調査」https://www.jahis.jp/action/id=1178?contents_type=23
- 厚生労働省「医療DXについて」(医療DX令和ビジョン2030)https://www.mhlw.go.jp/stf/iryoudx.html
- 厚生労働科学研究「効率的な看護業務の推進に向けた実態調査研究」https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/27020
- ニチイ学館「看護業務量診断——業務量管理の重要性とは?」https://medi.nichiigakkan.co.jp/oyakudachi/column/66/
- 日本看護協会「看護記録に関する指針」https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/guideline/nursing_record.pdf
- 日本看護協会「看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド(聖隷浜松病院事例)」https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/shift_n_share/guideline/tns_guideline.pdf






