看護師の働き方改革、実際に何が変わった?残業を減らした病院の具体的な取り組みと事例

「働き方改革は進んでいない」と感じる看護師は現在も過半数を超えます(カンゴトーク2023年調査・672名)。しかし一方で、具体的な施策を組み合わせて超過勤務を大幅に削減し、離職率改善につなげた病院も確実に存在します。
この記事では、抽象的な「改革の必要性」ではなく、実際に何をやったら何が変わったかを、数値と事例とともに紹介します。
- 「働き方改革」という言葉はよく聞くが、自分の職場では何も変わっていないと感じている看護師の方
- 残業・夜勤負担・ワーク・ライフ・バランスの改善に向けて、具体的に何から手をつければよいか悩んでいる師長・管理職の方
- 成果が出た病院の事例を参考にしながら、自部署に合う取り組みを探したい方
- 子育てや介護と仕事の両立に限界を感じ、柔軟な働き方ができる職場環境を求めている方
看護師の超過勤務の実態
取り組みを考える前に、現状の規模感を確認しておきましょう。
日本医療労働組合連合会の「2022年看護職員の労働実態調査」では、就業時間後に超過勤務をしている看護師は73.4%、就業時間前も45.9%にのぼります[1]。
時間外労働が月20時間以上の看護師は全体の19.4%、月30時間以上も9.0%存在します。
日本看護協会の「2024年病院看護実態調査」による月平均残業時間は5.1時間ですが、これはサービス残業を含まない申告ベースの数値です。実態はさらに長い傾向があることも同調査で示唆されています[2]。
働き方改革関連法(2019年施行)により、看護師を含む全労働者の時間外労働は原則月45時間・年360時間が上限となっており、特別条項でも年720時間が限度です。この基準を超えている職場は法的リスクを抱えていることになります。

事例1:ユニフォームの色分けで年間900時間削減(福井大学医学部附属病院)
「どこに声をかければいいかわからないから、業務が終わったのに残ってしまう」――これが超過勤務の一因になっていることは、見落とされがちです。
国立大学法人福井大学医学部附属病院では、日勤と夜勤でユニフォームの色を変えて勤務と非勤務を明確化しました。シフト終わりの看護師が「引き継げる業務があるかもしれない」という理由で残ることが多かったのですが、色分けによって勤務終了後に残っている職員が一目でわかるようになり、その結果として年間900時間の残業時間削減につながりました。
費用はほぼゼロ。ユニフォームの色を変えるだけで、年間900時間という規模の削減が実現した点は、「改革には大きな投資が必要」という思い込みを崩す好事例です[3]。

事例2:3年間の継続的改革で看護師残業が約4割減(糸魚川総合病院)
新潟県の糸魚川総合病院では、2021年から働き方改革コンサルティングを導入し、手術室・内視鏡チーム・看護部が段階的に改善に取り組んできました。
2021年度と2024年度を比較すると、病棟看護師1人当たりの平均超過勤務時間は約4割減少しています。同院の看護部長によると、改善の核心は「要因分析をロジカルに行い、感情論や押し付け合いにならない議論の場をつくること」だったといいます。
具体的な施策としては、書類・パンフレットの病棟間での標準化、会議録のリアルタイム作成、複数部署の情報をデジタルで共有する仕組みづくりが実施されています。「感覚で語る」から「データで語る」に文化が変わったことが、持続可能な改革につながっています[4]。
事例3:入院時の問診・帳票作成をIT化して入院対応時間40分削減(浅ノ川総合病院)
石川県の浅ノ川総合病院では、2023年よりメディカルギーク株式会社のscreeを導入しました。入院対応を行う際の問診や帳票作成をIT化し、患者・家族は手元のスマホや病院のタブレットで問診を入力すればOK。問診が完了した時点で看護計画や帳票類も出来上がっている状態になりました。看護師はカルテに連携するのみで記録は終了、最大1/3の時間削減に繋がっています。

事例4:3つのゼロコスト施策で1人あたり残業1時間削減(日本看護協会アワード事例)
日本看護協会の「看護業務効率化先進事例アワード」に報告された取り組みでは、費用をかけずに以下の3施策を実施しました[4]。
- 日勤・夜勤のユニフォームの色分けによる視覚的な勤務識別
- 担当者が患者のそばを一緒に歩きながら引き継ぐ「ウォーキングカンファレンス」の導入
- 複数の部署で柔軟に対応できる「ポリバレントナース」の育成
取り組み実施後1年で1人当たり平均約1時間の残業削減を達成しています。3つの施策はいずれも費用をかけることなく実現できる点が特徴です。
柔軟な勤務制度で夜勤負担軽減とWLBの両立
超過勤務の削減と並行して、多様な勤務形態の整備が離職防止に直結します。日本看護協会は夜勤環境改善として以下のガイドラインを提示しています。

- 勤務による拘束時間は13時間以内
- 勤務間インターバル11時間以上の確保
- 頻繁な昼夜入れ替わりが生じない交代制の編成
- 仮眠環境の整備
育児・介護との両立支援としては、時短勤務制度だけでなく「時間単位での有給休暇取得」の仕組みを整えることで、個別事情に応じた柔軟な対応が可能になります。日本看護協会の2024年調査では、短時間正職員制度を導入した施設において離職率の改善効果が確認されています。
また、夜勤専従制度の導入(日勤に入らず夜勤のみを担当する職員の配置)は、夜勤の担い手を安定確保しつつ、日勤スタッフの負担軽減と生活リズム安定に貢献します。
改革を定着させるための三原則
上記の事例に共通するのは、以下の3点です。
①感覚ではなくデータで議論する:「なんとなく忙しい」ではなく、「どの部署で何時間残業が発生しているか」を数値で把握することが出発点です。タイムカードと時間外勤務報告書の併用など、客観的な記録の仕組みを整えましょう。
②現場を巻き込んで設計する:管理職主導で上から施策を押し付けても定着しません。師長だけが決めた変更より、スタッフ全員が議論に参加して決めた変更の方が継続率が高い傾向があります。付箋やアンケートを使ったボトムアップの意見収集が有効です。
③小さく始めて成功体験を作る:一度に病院全体を変えようとせず、1病棟・1勤務帯での試験導入から始め、数値で成果を確認してから展開する段階的アプローチが現実的です。

まとめ
看護師の働き方改革は「声明を出すこと」ではなく「現場が変わること」です。ユニフォームの色分けという一見小さな施策が年間900時間の削減につながった事例が示すように、改革のきっかけは大規模投資でなくても構いません。
重要なのは、「なぜ残業が発生しているのか」を定量的に把握し、現場の声を拾いながら継続的に改善を積み重ねることです。働き続けられる環境は、看護師自身の健康だけでなく、患者へのケアの質を守ることにも直結します。
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参考資料
- 日本医療労働組合連合会「2022年看護職員の労働実態調査」https://irouren.or.jp/research/
- 日本看護協会「2024年病院看護実態調査 報告書」https://www.nurse.or.jp/nursing/assets/101.pdf
- 日本看護協会「看護職の働き方改革」https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/hatarakikata/index.html
- 株式会社ワーク・ライフバランス「糸魚川総合病院 働き方改革3年間の取り組み」https://medical.work-life-b.co.jp/records/itoigawa-sannnen-hp/
- 公益社団法人日本看護協会「看護業務効率化先進事例アワード事例集」https://kango-award.jp/works1/
- ワイズマン「看護の業務改善で人手不足&離職率を改善!手順と事例を紹介」https://www.wiseman.co.jp/column/medical/30158/






