看護師の業務改善が進まない理由と成功の鍵:現場の声から学ぶ
看護師の業務改善は、多くの医療機関にとって喫緊の課題です。しかし、実際の現場では「改善が必要だと分かっているが進まない」「効率化の取り組みが現場に合わない」といった声がよく聞かれます。
本記事では、業務改善の難しさと、現場の看護師へのインタビューをもとに、解決の糸口を探ります。
看護師の業務改善が進みにくい理由
業務改善の必要性は広く認識されているものの、以下のような理由で実際の導入が難航することが多いです。
① 業務負担の大きさ
現場の看護師は常に忙しく、目の前の業務をこなすだけで精一杯です。そのため、新しい改善策を試す余裕がなく、「今のままでなんとかやるしかない」という意識が根付いてしまうことがあります。

② 現場と経営層の温度差
病院全体の業務改善の提案は、経営層や管理職から行われることもありますが、現場の実情と乖離しているケースも少なくありません。
例えば、電子カルテや業務管理システムの導入が決まっても、実際のワークフローに合わず負担が増えてしまうことがあります。
③ 文化や慣習の影響
長年の慣習が根強い現場やベテラン看護師が多い部署では、新しい方法を取り入れることに抵抗が生じやすくなります。
特に、看護は「人力」であることや「時間をかけること」が良いとされる文化があるため、IT化や効率化に対し消極的な意見が出やすいです。
④ 人手不足と教育の難しさ
看護業界全体として人手不足が深刻化しており、新しい業務改善策を取り入れるための研修時間を確保することが難しいケースもあります。
また、新人や中途採用のスタッフに対しても、業務改善の意識を共有することが難しいという課題もあります。
オリエンテーションの動画化をした看護師の声
では、実際に現場で業務改善の経験がある看護師たちは、どのように進めていったのか、インタビューをもとに見てみましょう。
【事例】

- 看護師歴8年、リーダー業務やプリセプターを行う中堅
- 口頭で行っていた入院オリエンテーションを動画化
‐まずは業務改善を行おうと思ったきっかけを教えてください。
入院や手術のオリエンテーションはこれまで看護師が口頭で行っていました。
他の患者の対応もある中、説明は15分から長いと30分以上かかる場合もあり、他の業務やケアの時間を圧迫していました。
他院を受診した際に、待合室のモニターでオリエンテーションの動画が流れており、当院でもこの方法が取り入れられるのでは?と、思ったのがきっかけです。

‐はじめに何をしましたか?
部署の先輩に相談したところ、「うちにはモニターが無いし、動画だと理解が追い付かない患者も出てくる。口頭で説明すべき。」と提案を却下されました。
確かにモニターはないし、購入するとなると恐らく稟議審査を通す必要があり、費用が掛かる取り組みはかなりハードルが高いと感じました。

‐難しい状況かと思いますが、その後はどのように進めていきましたか?
諦めかけましたが、まずは行動を起こさないと状況はずっと変わらないと思い、パワーポイントで簡単な動画を試作しました。
そして、活用方法について部署の管理職にプレゼンしたところ、管理職側は「患者対応の質を向上させたい」という思いがあり、試しに動画を使ってみよう、という運びになりました。

‐管理職を味方に付けられたのは大きいですね。でもその時点では抵抗をスタッフも多かったのでは?
そうですね、実際にオリエンテーションを行っているスタッフの同意が得られなければ進めることはできません。
なので、動画化に反対意見を持っていたスタッフには、「全員に動画を見せるわけではなく、個別な対応が必要な患者には今まで通り口頭で対応し、むしろそのような患者により時間を割くための効率化でもある」ということを強調しました。
そうすることで、「決して楽をしようとしているわけではなく、個別的なケアをより充実させるための業務改善である」ということを理解してもらえました。
また、「見せるためのモニターがない」という意見がありましたが、それに対しては部署で余っているタブレットを使用することを提案しました。うちの部署には、コロナ禍にオンライン面談で使用していたタブレットがあったので。

‐反対意見を受け入れた結果、最終的に理解を得られたということですね。
はい、そうですね。
スタッフたちは、日々時間に追われて仕事をしていますが、本当は患者一人一人にもっと向き合う時間が欲しいという気持ちは皆同じでした。
その為にはどうしたらよいか、解決策を部署全体で考えるきっかけにもなりました。

‐実際に動画を業務に取り入れることはできましたか?
まずは試験導入を行いました。
そうすると、動画を使用したスタッフ達から様々な意見が出て「動線を変えたほうが使いやすい」「この内容も動画に追加したい」など、自然と前向きに活用する方向に進みました。

‐業務改善の評価はどのように行いましたか?
せっかくなら看護研究としてこの取り組みを発表しないか、と管理職から提案されたこともあり、患者アンケートを実施しました。その結果、「口頭での説明より理解が深まった」という意見が多数ありました。
更にスタッフからも、「動画を見せている時間を他の業務に充てることができる」「気持ちにゆとりができた」との声も聞かれました。

‐メリットが大きいことが証明されたのですね。一方で今後への課題はありますか?
そうですね、若い方は動画でほぼ十分理解できていたのですが、高齢者は追加での説明が必要だったり、動画の内容と同じ質問をされることもありました。
また、ご家族やご本人から後日「動画の内容を忘れてしまった」と問い合わせが来ることもあり、対策が必要なのでは、という意見が出ました。
そのため、QRコードを活用し、ご家族も含めて自宅でスマホなどからいつでも動画を見返せるようにするなど、バージョンアップさせる予定でいます。

‐今回の取り組みを通してどんなことを感じましたか?
一つの小さな改善が現場の意識を変え、業務全体の効率化へとつながることを実感しました。もちろん、全ての改善策がスムーズに導入されるわけではありませんが、まずは試してみること、そして現場の意見を取り入れながら調整していくことが重要だと感じました。
また、もう一つ大きな変化として、部署全体においてIT化への抵抗が徐々に薄れてきたと感じます。
「IT」「DX化」に拒否反応を示していたベテラン看護師たちからも、「この業務もITで何とかできないか?」という声がちらほら聞かれるようになりました。
実現できるかどうかは別として、まずは部署全体が「働く環境をより良くするために」という意識を持つことが大切だということを学びました。

‐今後も更なる変化が楽しみですね!インタビューありがとうございました。
まとめ
看護師の業務改善は、多くの医療機関で必要とされている一方で、現場の負担や慣習、経営層との温度差など、さまざまな要因によって進みにくい現状があります。
しかし、小さな成功体験を積み重ねることで、徐々に現場の意識を変え、改善の文化を根付かせることができます。
今回紹介した事例のように、業務の効率化が単なる負担軽減にとどまらず、患者対応の質の向上にもつながることを現場が実感できれば、より前向きに取り組めるようになります。
看護師一人ひとりが「まずは小さな一歩を踏み出す」ことが、業務改善を成功させる鍵となります。
ぜひ勇気をもって、より良い看護が提供できるよう動き出しましょう!
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