看護師が行う入退院支援とは?実際の事例をもとに支援の流れと介入のポイントを解説
「退院に向けた調整、どこから手をつければいいのか分からない」
「転院先がなかなか決まらず、患者さんの退院が遅れてしまった」
入退院支援に関わる看護師なら、このような経験を一度はしたことがあるのではないでしょうか。
入退院支援は、患者が安心して療養生活を送るための土台を作る仕事です。しかしその業務範囲は広く、多職種・多機関との連携が求められるため、経験の浅い看護師にとってはハードルが高い業務の一つでもあります。
本記事では、現役看護師の視点から入退院支援の実際の流れと介入のポイントを事例をもとに解説します。日々の業務にすぐ活かせる内容を意識しましたので、ぜひ最後までご覧ください。
- 入退院支援・退院調整を担当している病棟看護師
- 入退院支援室・地域連携室に異動・配属になったばかりの看護師
- 退院調整の質を高めたいと考えている看護部長・師長
- 多職種連携や地域連携をスムーズに進めたいと感じている医療スタッフ
入退院支援とは?看護師の役割
入退院支援とは、患者が入院前から退院後の生活まで見据えたうえで、医療・介護・福祉の各機関と連携しながら療養継続を支援する取り組みです。
2018年度の診療報酬改定では「入退院支援加算」が新設され(旧:退院支援加算)、病院側が入院早期から退院支援に取り組むことが診療報酬上も評価されるようになりました(厚生労働省, 2018)。これにより、多くの急性期病院で入院から48〜72時間以内のスクリーニングと支援介入が標準化されつつあります。

看護師は患者に最も近い医療職として、以下のような役割を担います。
- 退院困難な要因(社会的背景・ADL・家族状況など)の早期スクリーニング
- 患者・家族への意思確認と目標設定
- 多職種カンファレンスの調整・情報集約
- 転院・施設復帰・在宅復帰に向けた実務調整
入退院支援が必要な患者をどう見極めるか

すべての入院患者が同等の退院支援を必要とするわけではありません。厚生労働省の基準に基づくスクリーニングでは、主に以下のような要因を持つ患者が「退院困難な可能性がある」と判断されます(入退院支援加算の算定要件より)。
- 悪性腫瘍・認知症・誤嚥性肺炎などの疾患を有する
- 緊急入院であった
- 要介護認定を受けている、または申請中
- 独居・高齢夫婦のみ世帯など、在宅環境に課題がある
- キーパーソンが不在または遠方にいる
これらの項目に複数該当する患者は、入院早期からの介入が必要です。
【事例】80代男性・腰椎圧迫骨折による緊急入院
患者背景
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年齢・性別 | 80代・男性 |
| 診断名 | 腰椎圧迫骨折(緊急入院) |
| 入院前の生活 | 介護施設に入居中 |
| 家族状況 | 妻も同施設入居・子どもは遠方在住でキーパーソンだが頻繁な来院は困難 |
| 入院の経緯 | 腰痛を訴え施設スタッフ同行のもと外来受診→圧迫骨折と診断されそのまま緊急入院 |
| 現在の安静度 | コルセット装着・ヘッドアップ30度まで可 |
想定されるリスクと課題
腰椎圧迫骨折は数週間〜数か月の療養が必要となることが多く、急性期病院での長期入院継続は難しいため、療養型病院への転院を早期から想定する必要がありました。
また、以下のような社会的リスクも重なっていました。
- キーパーソンが遠方在住:意思確認・情報共有のタイミングが限られる
- 施設入居中:退院先として施設復帰を目指すが、受け入れ可能なADLレベルの確認が必要
- 高齢・廃用リスク:安静による急激なADL低下の可能性
家族が遠方在住の場合、退院支援のために取りたい情報があっても十分に取れなかったり、問診の聞き取りが難しい場合があります。施設に入所したての場合、施設側も十分な情報を持っていない場合も。
メディカルギークのscreeは問診票をIT化する入退院支援サービスですが、専用QRコード(URL)を使えば遠方在住の家族にも問診の回答やヒアリングを依頼できます。特にADLを落とさず施設へ戻ることや在宅復帰を見据える場合、いかに個別性を網羅して退院支援できるかは病棟看護師・退院調整看護師の大きな役割です。
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実際に行った入退院支援の内容
① 入院直後の情報共有と目標設定(入院0〜2日目)
入院直後から施設スタッフ・ケアマネージャー・遠方在住の家族それぞれへ連絡を取り、入院の経緯と現在の状態を共有しました。
家族への連絡は「報告」だけでなく、「意向確認」と「今後の流れの説明」をセットにして行うと、後の意思決定がスムーズになります。
ポイントとなったのは、「施設がどのくらいのADLであれば受け入れ可能か」を早期に確認すること。
例えば介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームなどは比較的介護度が高くても受け入れ可能な一方で、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などは介護度が高くなると受け入れが困難になる場合があります。
これにより「当院で目指すゴール」が明確になり、リハビリ方針や転院・退院時期の見通しを立てやすくなりました。

② 早期からの転院先調整(入院2〜3日目)
圧迫骨折のリハビリには一定期間を要することが見込まれるため、急性期を過ぎた後の転院先確保を早期に開始しました。
地域連携室に情報提供を行い、候補となる療養型病院の選定を依頼。転院先が決まるまでのタイムラグを考慮し、入院初期から動き始めることが不可欠でした。
転院時期・条件に関する最新情報は地域連携室から病棟看護師へ共有してもらうよう調整し、情報が途切れないようにしました。
③ リハビリ環境の整備と廃用予防
安静度の範囲内でリハビリを入院初日から開始。理学療法士と連携しながら、毎日継続できる環境を整えることを優先しました。
患者本人に対しては、「なぜ今リハビリが必要なのか」を丁寧に説明。施設スタッフにも可動域制限の状況や介助方法を情報共有し、転院・施設復帰後の一貫したケアにつながるよう努めました。
④ 転院・施設復帰に向けた実務準備
転院時期が近づいた段階で、必要書類・処置・物品の準備を関連部署と連携しながら進めました。
施設スタッフへは圧迫骨折の再発予防(前かがみ・重い物の持ち上げを避けるなど)についても説明。退院後の生活を見据えた指導を転院前に行うことで、施設側の不安軽減にもつながりました。
入退院支援を成功させる3つのポイント
1. 早期スクリーニングと早期介入
入退院支援加算の要件でも示されているように、入院後48〜72時間以内のスクリーニングが基本です。転院先の調整は時間がかかることも多く、「そろそろ退院を考えよう」では間に合わないケースもあります。Aさんのように転院を伴う場合は特に、入院直後からの動き出しが重要です。

2. キーパーソンが近くにいない場合の代替連携
近年、独居高齢者や遠方家族のケースが増加しています。国立社会保障・人口問題研究所の2024年推計によれば、65歳以上男性の独居率は2020年の16.4%から2050年には26.1%へ、女性は23.6%から29.3%へと上昇し、近親者のいない高齢単独世帯が急増すると予測されています(国立社会保障・人口問題研究所, 2024)。
キーパーソンが不在・遠方の場合は、施設スタッフ・ケアマネージャー・地域連携室を巻き込んだチームとしての調整が不可欠です。看護師は情報の集約点として、多機関をつなぐ調整役を果たす必要があります。
3. 「退院後の生活」を見据えた指導・連携
退院支援の目的は「退院させること」ではなく、「退院後もその方のペースで安全に生活できること」です。Aさんの事例でも、施設スタッフへの再発予防指導を転院前に実施することで、施設側の受け入れ不安の軽減と継続ケアの質向上を図りました。
退院前の指導・情報提供を丁寧に行うことが、再入院予防にもつながります。

まとめ
入退院支援は、患者の療養生活の質を左右する重要な看護業務です。特に急性期病院では、入院直後からの迅速なアセスメントと多職種・多機関との連携が支援の質を決定します。
今回紹介したAさんの事例から、押さえておきたいポイントをまとめます。
- 入院直後(48〜72時間以内)のスクリーニングと介入開始
- 退院先の受け入れ条件を早期に確認し、ゴールを明確化する
- 転院を伴う場合は早期から地域連携室・関係機関と調整を始める
- キーパーソンが遠方・不在の場合は施設スタッフ・ケアマネを積極的に巻き込む
- 退院後の生活を見据えた指導・情報提供を転院・退院前に行う
入退院支援に正解はひとつではありませんが、「早く・広く・具体的に動く」ことが、患者にとっても現場にとっても最善の結果につながります。
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参考資料
- 厚生労働省「平成30年度診療報酬改定の概要(入退院支援加算)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html - 国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6(2024)年推計」
https://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/HPRJ2024/t-page.asp
※事例は実際の臨床経験をもとに、個人が特定されないよう一部改変しています。






